もう十数年前の話であるが、TVを見ていると奇妙なニュースが流れた。
京都市の動物園で飼育されているゴリラの『ゴン』は、入園者に向けて全力投球を行う。
自分の糞を・・・。
このことを聞きつけた受験生たちが、わざわざ『ゴンの糞を浴びる』ためにゴリラ舎に詰め掛けているらしい。・・・ 運を付けるために。
このニュースを聞いた瞬間、「馬鹿じゃないか?」と思ったのを記憶している。
「大学にはどうやって合格したのですか?」
「そうですね、ゴリラのウ◎コを浴びて、『運』をつけたからですよ(笑)」
・・・・、そんな下品な返答を公の場で話すつもりなのか?
ウ◎コを浴びて大喜びしている受験諸君。
しかもTV局は霊長類研究家にインタビューを行って、糞を投げる行為は「ストレス」の蓄積が原因ではないか?という解説までしていた。
夕食時に、ウ◎コを浴びる話題、しかも丁寧な解説付き。
貧困や内戦に苦しむ発展途上国の報道マンが聞いたら、
複雑な感情を抱くのではないか?
「JAPAN」はなんと平和な国なんだろう・・・と。
最近スタートしたArapedia。
読者諸氏はすでにお気づきとは思うが、私は下品な話しが苦手だ。
いや、むしろ大嫌いの部類だと思う。
そんな品行方正でいつも紳士的な私が、今日はジンクスと『運』について皆さんに語ってみようと思う。
冒頭に記した少々「品の無い話題」のあとで申し訳ないのだが、
食事はすでに済まされたであろうか?
まだ済ませておられない方は食事のあとで読み進めて欲しい。
今期の烏賊シーズン、私が所属する「沖縄スクイッドジャンキーズ」のメンバーの間に、おかしな「ジンクス」が生まれた。
寒空の下で、下着一枚になって濡れてしまった洋服を着替えたら、デカイ一発を当てることが出来る・・・。
ジンクスの発祥は誰か?・・・そう、KING OF 変態 『チェ・ラクダルネッサンス原国 43歳』・・・。
快調に釣果を伸ばし続ける チェ に、メンバーの全員がそのジンクスが確立されたことに疑問を感じることは無かった。
昨年末、メンバーの朔太郎がジンクス継承の先陣を切った。
その後、彼の釣果は彼のブログの通り、快調な滑り出しをみせている。
そして2010年01月01日の深夜、私は寒風が吹く駐車場で、下着一枚になって、ずぶ濡れのズボンを着替えていた・・・・。
ジンクスを継承したのだ。
この私が、いつでも冷静沈着な私が、ジンクスを継承したのだ!!
着替えながら、ニヤ付いていたのは言うまでもない。
そして数日後、食あたりで寝込んでしまうなどの障害もあったが、ついに来たのである。
ジンクスを確信できる『その日』が。
軽めの夕食をとりながら、本日のスケジュールをたてる。
脳内MAPには那覇近郊のポイントが表示され、タイムスケジュールとルート、そしてポイントごとの作戦を考える。
満潮はam4:00。釣行開始時間はam0:00に設定し、Eポイントから新Tポイントをランガン、ポイントを移動してAポイント〜Iポイント、そしてMポイントへと流れる・・・・。
完璧だ、完璧なスケジュールではないか!
期待を胸に、pm11:45に自宅を出発した。
そして、Eポイント〜新Tポイントをランガンした私は、ふと考えた。
「・・・Tポイントはどうなのだろう?」と。
am1:15、私はTポイントを触るために、釣り座に向けてテトラポット上を歩いた。そのとき・・・・、
!???
こんなに柔らかいテトラポットがあるのか?
あるわけが無い。
そうあるわけが無い、テトラポットはコンクリの塊なのだから。
私はゆっくりと自分の足元を確認した。
そこには確実にその物体は存在した・・・。
もうお気づきであろう!
ウ◎コだ!
しっかりと大地に根を張っている、紛れも無いウ◎コだ。
こんなところまで、犬や猫は来ないであろう・・・。
数あるテトラポットの中でも、このテトラポットは比較的水平で、足場も良い。
人間の『それ』である確率は90%を超えるものと推測される。
しかも、その排泄物には私の靴底の模様がしっかりと刻印されていた。
・・・冷静な私は、デジタルカメラを取り出した。
「記念に撮っておこう。」
デジタルカメラのレンズをその排泄物に向けてシャッターボタンを半押しする。
ピントが合った確認音をデジタルカメラが発し、撮影の準備が整ったことを私に知らせる。
そのとき、心に迷いが生じた。
「こんなものを、『記念』に残すべきなのか?こんな『ウ◎コ』を・・・。」
私はしばらくの間、考えてしまった。
この物体のデータをメモリーカードに残したら・・・、他のデータまで毒されてしまうのではないか?
妻や愛娘の明るい笑顔が保存されている『家族の肖像』の中に、『元の所有者』から捨てられて、しかも私に踏みつけられている『彼』(あまりにもグロいので、以下は『彼』としておく)を迎え入れてよいのか?
それは、ダメだろう・・・
私はそれ以上シャッターボタンを押し込むことを止めて、ケースにデジタルカメラを戻した。
そして、自分の靴の裏を入念に洗った。何度も、何度も。
当り前の選択である。そう、これが、コレこそが当り前の選択である。
「よい選択をした。わたしは良い道を選ぶことが出来たんだ・・・。」
私は釣り座に向かい、キャストを開始した。
「よほど緊急事態だったのだろうなぁ、間に合ったのかな?『元の所有者は』」
エギをフォールさせながら、悠長に考えていたそのとき!
「・・・・!!」
私は忘れていた作業を思い出した。
ちゃんと洗浄できているかの、『最終確認』・・・、そう
ニオイを嗅ぐことである。
この確認作業には、相当の勇気と思い切りが必要だ。
出来れば確認を行いたくは無い、でも確認を行う必要がある。
何故ならこのあと乗り込むであろう私の車に、
『彼』の香りが移ってしまう危険があるからだ。
アクセルペダルに移り、アクセルペダルからビジネスシューズに移り・・・、『彼』の存在が無限連鎖をおこしてしまう。
キャストするたびに迷った、もはや釣りに集中することが出来ない。
数回のキャストとフォールを繰り返したあと、私は右足の靴を脱いだ・・・。
・・・・洗浄合格。
もはや心の曇りは無い。晴れ渡った空のように私の気持ちはクリアーだ。
Tポイントでの釣行を終了して、車に向かっていると曳釣りさん改め「ドン・キング」さんに会った。数分前に、何度か私に電話をくれたらしいが、そんな状況で着信に気が付くはずが無い・・・・。
ドン・キング氏は、私が先日ロストしたキーストンを確保してくれていた。
ありがたいことである。
しばらく会話したあと、今度会う約束をしてキングと別れた。
キングには『彼』を踏んだ話しはしなかった。
次のIポイントではT氏に会った。もちろん『彼』の話しはしない。
『運』は他の人に話すものではないのだから・・・・。
am4:00、予定通りランガンを終了して家路に付いた私は、釣果が無いにもかかわらず、その胸のうちは今後の期待に大きくふくらんでいた。
次の釣行は、素晴らしいものになるであろうと・・・・。
『ジンクス』と『運』をつけた私は、次回の釣行で強烈な一発を手に入れるはずであった。
しかし前回の記事で述べたように、ボートエギングで撃沈を食らってしまった。
はたと気が付いた。
私は『彼』をきれいに洗い流していたのである。
『彼』の存在すら感じさせないように、入念に捨て去ったのである。
最初から『運』など残っているはずはないのだ・・・。
そして、私も結局はゴリラのウ◎コを浴びて『運』が付いたと喜んでいる受験生と大差は無い。
運を天に任せて努力を怠ってしまいがちな凡人の範疇に入っているのだ、私という人間は・・・。
やはり、釣果とは釣行を重ねた者に付いてくるものなのだ。
努力に勝る天才はいないのだから・・・。
このような長文をいつも読んでくださって、ありがとうございます。
そして今回も根気強く読んでいただいたArapedia読者諸氏、
さぁ、最後に選択していただこうか。
見るのか、見ないのか
『彼』を・・・・・。
疑問に思われたであろう・・・、記録には残していないのでは?と。
甘く見てもらっては困る。
撮りに行ったのだよ!
後日、
仕事帰りの深夜に、
スーツ姿で。
変態とは、漢の生き様とは、そういうものなのだ。
さぁ、どうぞご覧下さい!変態さん!
このような不安定な場所で、『彼』を産み落とした『元の所有者』に敬意を表する
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