チェ・チョリーナ・のり子 3
前回までのあらすじ
もう、めちゃくちゃ!
Act 3 コード13880
「落ち着け、のり子!まだ、チェ3000は暴走していない!」
私は、釣り上げた烏賊を見る姿勢そのままで、のり子に叫んだ。
のり子は顔色を失ったまま、座り込んでいる。
「タシルー、チェ3000のキルスイッチの場所は知っているな…。…今がチャンスだ、左右に別れよう。」
私の言葉に、タシルーは無言で頷いた。
「1…、2…、…3。よしっ、今だ!」
私たちは同時にチェ3000に飛び掛かり、私は右の、そしてタシルーはチェの左乳首を連打した。
「タシルー、何回だっけ?」
私はチェの表情をチェックしながら叫んだ。
「
12000回です、
博士!」
タシルーが、乳首から目を離さずに答えた。
「………。もういい、…自爆させよう。」
「えっ?はっ、博士!何故!」
タシルーが人差し指の動きを止めずに尋ねてきた。
「12000回も、面倒じゃないか…。」
「はっ、博士!あなたが設定したのでしょ!」
私は、一緒にいた在沖米軍のコマンダーに目配せした。
コマンダーが右手をあげると、周囲から無数の兵士が現れた。
チェ3000は兵士によって捕獲され、米軍基地に運ぶためのヘリが上空に爆音とともに姿を見せた。
「のり子、貴様にもご同行願おうか…。」
のり子は抵抗することなく、ヘリに乗り込んだ。
−15時00分 米軍基地キャンプハンセン−
「いい加減に、女言葉は止めたらどうだ?貴様ナニモノだ!まぁ、女じゃないのは確認したが…。」
薄暗い尋問部屋の真ん中で、『のり子』は全裸で椅子に縛り付けられている。
「こ、これは…、烏賊よ!何度言えばわかるのよ!」
のり子は「鏡の裏側にいる」私に叫んだ。
「確かに烏賊かもしれないな…。烏賊ならどうする?トニー?」
私はマイクを通して、のり子を詰問する若い兵士に尋ねた。兵士は私の方向を見て片目を閉じた。
「…正解だ、トニー。そう…ギャフを打つ…ことだな。よろしい…、やってくれ。」
私の言葉に、のり子は焦りの色を、隠せずに叫ぶ。
「これは拷問だ!条約を知っているのか!違法のはずだぞアラーキー!」
私はなおも、マイクを通して話す。
「ハーグ陸戦条約のことかね?知らんね…。もっとも、軍人でない私が、『軍人』でないお前を拷問するのに、条約など関係あるまい。」
ギャフが部屋に持ち込まれた。
…第一精巧社 オートロングギャフ 630 XS刃 2キロオーバーなど余裕過ぎる…。
トニーはスルスルと胴を出し、ギャフを最長にセットした。
「……?何故、…何故全開にするんだ?」
もはや男になった『のり子』は少し動揺して呟いた。
そしてスピーカーから、絶望を知らせるアナウンスが流れる。
「さぁ、ご登場願おうか…。今日のゲストだ…。天才ギャフラーK!!」
もはや『のり子』のベールを完全に脱いだ鉄人が叫んだ。まるで地獄を感じた、野獣の叫びのように…。
「ヤッメッロォ〜!」
−15時30分 基地地下ミサイルサイロ内−
「OK Tashi.Put that in!」
弾道ミサイルの胴体に開いたスペースを指差して、若い米兵が叫んだ。
タシルーはチェ3000に話しかけた。
「チェ、すまないね。こうするよりないんだ…。まぁ、感情や言語プログラムが不完全なお前にはわからないだろうが…。」
タシルーの目は、育ての親のそれであった。
「本当にすまない…。チェ、私たちの技術がもう少し早く到達していれば…。」
タシルーは、目に涙を浮かべてチェの肩を抱いた。
そのとき、小さな異変が起こった。
「アリガトウ、タシルー。キモチダケ デ ジュウブン ダヨ。イカダイスキ。」
チェ3000プロトタイプが、自我に目覚めた…。
「ボク ハ ヘイキ ダ。サァ、ボク ノ キバク スイッチ ヲ オスンダ、タシルー。」
そう言って、チェ3000は股間から起爆スイッチをだした。
「チェ、お前…。そのスイッチ…、まるでチ〇ポみたいじゃないか。握れって…、そんな。」
タシルーの頬に堪えていた熱いモノが流れ出した。
「チェ3000、僕が博士にお願いしてみよう。お前のCPUをもう一度、仕上げることをね。」
タシルーは、ミサイルサイロの出口を見つめた。
−同時刻 キャンプハンセン−
「あぁ〜、ヤッ、ヤメロ〜!もう止めてくれ〜!」
天才ギャフラーKの執拗な責めに鉄人が、悲痛な叫びを繰り返した。
私は、エネルギー補給に準備した『レッド・ブル』を一気に飲み干して呟いた。
「くっ、くっ、くっ。…圧倒的じゃないか…、Kのギャフ打ちは。」
そのとき、背後のドアが開き司令官のロブが入って来た。
「アラーキー、あいつの身元はMI6(英国軍諜報部第6課)のコード13880、『鉄人』だ。…同盟国の人物をああするのは、少々マズイ。」
司令官は、マジックミラー越しに『鉄人』をあごで指しながら私に話した。
私は、マイクのスイッチを入れて叫んだ。
「終了だ!ギャフラーK!」
…しかし、鉄人の『烏賊』は3回宙を舞った後であった。
−16時30分 嘉手納町国道58号線 ウーズレィ・ホーネット 車内−
「すまなかった、鉄人。君が極秘のうちに解決してくれるつもりとは、思わなかったものでね。」
ギアを4速に入れながら、私は鉄人に話した。
「いいですよ、博士。こちらとしても、チェ3000の軍事利用が敵性国家に行われるリスクは同じだけ背負っていますからね。」
鉄人は、ギブスが巻かれた股間をさすりながら言った。
「ありがとう、そう言って貰えると、少し贖罪した気持ちになれるよ。ところで、何故、女装を?単なる変装なら下着までつける必要はないだろう?しかも、あんたデカ過ぎるよ…。」
トルコ葉『トレンド』に火を付けながら、私は鉄人に尋ねた。
「…なんと言えば。まぁ、趣味というか、癖と言っていいのか…。」
私は顔を赤くして話す鉄人の言葉を遮った。
「鉄人・・・、あんたも烏賊馬鹿じゃないのか?・・・ただの任務だけで、あんな変態ロボットを見つけにわざわざ英国から来ないよ・・・。」
鉄人は黙ったまま、ぼんやりと前方を見つめている。
構わずに私は話を続ける。
「このモメゴトが一息ついたら、一緒に烏賊釣りでもしないか?・・・タシルーも喜ぶと思うよ。」
「アラーキー博士・・・、わたしは・・・。」
鉄人が何かを話し出そうと、こちらを向いた瞬間、見覚えある車体が私の視界に入ってきた。
「おや?あれは、タシルーの車じゃないか?」
基地のゲートから、青いブガッティ・ヴェイロンが出て来る。助手席にいるのは、…チェ3000だ。
「博士、追いかけて!」
鉄人が指を差しながら叫んだ。
「この車で、あれに追い付くはずないだろ!ヘリに乗り換えよう。」
私はそのまま基地のゲートに車を進めた。
そして基地に入るふりをして、助手席の鉄人を車外に蹴り落とした。
「ここから先は我々の責任だ!生きていたら、どこかの海で会おう!鉄人!」
窓から鉄人に大声で叫ぶと、ギアを2速に叩き込んでアクセルを踏み込んだ。
後方からは鉄人の叫ぶ声と、急ハンドルによるタイヤの悲鳴だけが聞こえた。
私は無言でタシルーを追いかけた。
− 一年後 ロンドン・ヒースロー空港 −
タシルーたちの活躍によって、チェ3000プロトタイプは無事に回収され、最悪の事態は避けることができた。
避難命令は『誤報』として処理され、サイバー・A・D社の名前が紙面をにぎわす事もなかった。
しかし、アラーキー博士とタシルーは事件の後、チェ3000とともに姿を消した…。
そして私の股間には、サイバー社の最新人工性器が組み込まれている。匿名での提供であった。
『鉄人、少しサービスしておいたよ。』
手書きのメッセージカードには、その一言しか記されていなかったが、贈り主の見当は付いている。
私は鉄人、暗いロンドンの空を見上げては、沖縄の青い海をいつも振り返っている。
「この次の休暇は、家族で沖縄に行こうかな…。」
そう呟きながら、空港の待合ラウンジで新聞に目をやった。
目がくぎ付けになった。
『モーリシャスで巨大イカ!エギングで世界初』
目が留まったのは見出しではない、掲載写真を見たからだ。
そこにはチェ3000プロトタイプのマヌケなラクダ顔と、
その後ろには、不適に笑っているタシルーとアラーキー博士の姿が小さく確認できた。
不鮮明ではあるが、間違いない。
私はすぐに自宅に電話をかけた。
「わたしだ。サクチョス、母さんに伝えてくれ。次の休暇の行き先は、モーリシャスだと。」
久しぶりに、烏賊キ〇ガイに会える…。そう考えると、なぜか私の人工性器がムクムクと反応を始めた。
「おいっ、止まれ!なんで反応するんだ!えっ?2、3キロ、4キロオーバー?止まれ〜!」
そして、ズボンを突き破ったそれは隆々とそびえ立ち、私はすぐに周囲を警官に取り囲まれた。
「まったく・・・、彼等らしい厄介なサービスだ。」
私は微笑みながら両手をあげて、窓の外の空を見上げた。
雪の積もったロンドンの空に、沖縄の暖かい風がかすかに吹いた気がする。
〜完〜
あとがき
もし、あなたが鉄人に会ったなら、
ぜひ彼の股間を触って欲しい。
私たちの最新技術を確認して貰えるだろう。
触ればその凄まじさが分かるだろうし、
彼も喜ぶだろう。
もっとも、私は触らないが…。
Tuned by 変態烏賊書房
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