1.釣りとの再会
『今度、沖縄に行くから、釣りの手配をよろしく!』
静岡にいる会社の先輩から、短いメールがきた。
私を釣りの世界に引きずり込んだA先輩。
鹿児島勤務時代のことである、
『俺は釣りを始めるぞ!道具を見に行こう!』
と急に言われ、なぜか私も釣具店へ連れていかれた。
釣具店に行くのは、中学生の時以来
(ブラックバス全盛期!しかも出身は滋賀県の琵琶湖周辺です!)のことであった。
『この浮きを流すとですね、鯛が喰ってくるんですよ。 ジワリ、ジワリ、ガツンッ!! 』
釣具店の店員は妄想を加速する説明を、A先輩に繰り返した。
結局、A先輩が最初に購入したのが
“全長40センチの浮き”“15フィート以上ある振り出し竿”そして
“ジェット天秤”であった。
『お前も買え・・・。』
『・・・えっ?』
『お前も釣りするんやろ?そやから、お前も買え・・・。』
『・・・イヤです。釣りはしませんよ。』『・・・買え。』
『イヤです!』
『ええから買え!』
『はぁ、じゃあ、買います・・・。』
そのときの私の“敵”は、店員ではなくA先輩であった。
結局、3000円のリールと7000円のルアーロッド、そしてルアーを数個ほど購入。
思えば9年前のあの日が、私の人生を変える 『釣り』 の世界との再会だった。
2.出航
11時−。
優理丸が沖縄マリーナを出航する。
「ジギングは出けへんのか?」
というA先輩とN澤氏のお願いを
『無視』 。
ポイントが遠いという理由と、ジギングは静岡でも出来るという事実。
しかし、オフショアタマンとオフショアGTは、静岡ではかなり無理がある。
理由を説明するのが
面倒だった時間がかかりそうなので、
ターゲットを強引かつ独断で選択する。
最初に向かうポイントはGT・・・。
ポイントに到着するまでの船中には、へヴィーメタルとハードロックが大音響で流れる。
私の世代はこのジャンルの音楽に弱い・・・。意味も無く、気分が燃えあがってしまうのだ。
太いギターリフ、底をなめるように進むベースライン、ウラの入ったドラム・・・。
これを聞くと、無条件反射で燃え上がるのが 『中年』 である。
ちなみに私のロック無条件反射はこうなる、
Queen=
反応を示す。
Red Hot Chili Peppers=
準備完了。
Cream , Stones , Zeppelin , etc =
発射。
King Crimson , The Doors , etc =
余韻。
と言いつつ、いろいろなジャンルにも反応を示してしまう私は、
節操の無い中年かもしれない。
(ハウスもテクノも好き)
思わず大幅に話が軌道から外れてしまったが、
とにかくも私は大型ジャークベイトをポイントに投げ込んだのである。
3.いつでも釣り日和
「次のポイントに行きましょうか?」
敦船長が、ポイントチェンジの提案をしてきた。
出航が早朝でなかったことや潮の関係で、
どうやら
GTのジアイは終了 したようだ。
結局、GTは反応を示さず、浅いポイントで何かが一発反応するに留めた。
そして、今回のもうひとつの目的である
タマンゲーム のポイントへと優理丸は舵を切る。
GTの反応が無かったことに悔しさを滲ませる敦船長の表情にも、
幾分か余裕と期待が復活してきた。
「OKです!スリットやドロップオフを狙ってキャストしてください!」
陽射しがよみがえった船上で、3人のアングラーがキャストを開始する。
そして、あいさつ代わりの、クチナジを2本キャッチ。
まずまずのすべり出しである。
しかし、A先輩のロッドは極端に短い・・・。
先ほどのGTチャレンジで、ロッドホルダーに立ててあった自分のシーバスロッドを、
自らで粉砕してしまったのだ。
・・・グッバイ、
・・・morethan。
うぉぉぉ~、もったいねぇ~!
A先輩は、トップとセカンドガイドが無くなった高級ロッドで彼らに立ち向かった。
彼ら・・・、そう
モンスタータマン である。
このポイントは優理丸の釣行において、数々の逸話が残っている。
『50ポンドのリーダーが瞬殺で引きちぎられた』
『ロッドがブチ曲がり、ゴリ巻き中にあっさりとのされた』
『PE3号では、到底勝ち目が無い・・。』
など、明らかに80クラスのモンスタータマンとのコンタクトがあったのだ。
そんなポイントで、少々おしゃれに変身した
モアザンショート
を振るA先輩・・・。
「
今日の、彼のタマンゲームは終わった ・・・。」
私は心の中で、A先輩の冥福を祈った。
そのとき、雲の向こうからひとすじの光とともに、タマンに愛された男
朔太郎 の姿が現れたのである!
「アラーキーよ、今はまだ彼の冥福を祈る時ではありません。
彼のチ◎コは大きいのでしょう?」
「あっ、あなたは!
タマンを高確率でキャッチする 朔太郎神父 !
はい、彼のチ◎コは本当にデカイのです。実際に見てしまったのですが、
携帯電話の大きさなど 余裕で凌いでいた と記憶しています。 (実話) 」
「そうですか、アラーキー。
それならば心配は要りません。
タマンは陰茎の大きな人を愛するのですから…。」
「しかし朔太郎神父、彼のロッドは正常ではありません。
はたしてモンスタータマンと闘えるのでしょうか?
それと、チ◎コの大きさがなぜタマンに関係があるのでしょうか?
教えてください、神父、教えてください!」
「その答えは、あなたの胸の中にあるのですよ・・・。
80オーバーのタマンの口に、私の陰◎が入りますか?
・・・そう、まったく無理な話しですね。」
「・・・神父、80オーバーのタマンの口は
拳が入るくらいの大きさ ですよ。
あなたは・・・、あなたは一体!?」
「
ごきげんよう、アラーキー。
あなた方の股間にタマンが微笑みますよう、
チ◎コをさすって祈っています・・・。」
「まっ、待ってください神父!
もう少しだけっ、もう少しだけお話しを!
女性の場合は、女性の場合はどうなるのですか〜!
・・・しっ、神父ぅ〜!」
朔太郎神父は柔らかな微笑みを残して、
陽光とエメラルドグリーンの混ざったスリットの奥へと消えていった。
ガツッ!
そのとき、私の意識を現実に引き戻す
アタリ がロッドを襲った。
先ほどのクチナジとは明らかに違う反応、
そして底へ、底へと突っ込み、ロッドを絞り込んでくる。
当然のようにゴリ巻きでファイトを行い、敦船長にタモの準備をお願いする。
上がってきたのは、タマンであった・・・。
そう、陰茎の大きな人を愛する魚 タマン 。
私の陰茎の大きさが、
タマンに認められた瞬間であった。
「オッケーィ!タマン、タマン!」 (でも、35センチです・・・。)
敦船長とハイタッチをかわし、
船の後方で悶々としているA先輩とN澤氏を忘れて交歓した。
敦船長は、自分のことのようにタマンキャッチを喜んでくださった。
「この調子でいきましょう!」
敦船長が満面の笑みを浮かべて、船上のメンバーに声をかける。
しかし、A先輩の眼光は、少しずつ正常な色彩を失いつつあった。
〜続く〜
Tuned by 変態烏賊書房