チェ・チョリーナ・のり子 2
前回までのあらすじ
のり子という女性から、アラーキー博士の事務所に身元調査の依頼がきた。
しかし、調査対象の特徴は、過去に暴走事故を起こして社会問題となった烏賊釣りマシン『チェ3000プロトタイプ』と酷似しており、その存在疑惑が浮上した。
完全回収されたはずのチェ3000の存在は、サイバー・アラーキー・ダイン社にとって大きな問題となるため、アラーキー博士は対策として非情で独善的な判断を下す。
チェ3000の秘密裏の回収・廃棄と、のり子の口封じのために研究員タシルーはのり子の住むガンダーラに向かった。
Act 2 のり子の島
−10時45分 ガンダーラ港−
「やぁ、タシルー、久しぶりだね。また釣りに来たのかい。」
初老の男が、釣り竿を持ったタシルーに声をかけた。
「こんにちは、おじさん。違うんだ、今日は釣りじゃないんだ。」
「ほう、タシルーが釣りじゃないなんてめずらしい。博士のお使いかな?」
男がタシルーに微笑む。
「実はね、チェ3000を探しに来たんだよぉ〜。あれは小型核融合炉が積んであるから、超アブナイんだよ〜。あっ、僕が言ったってことは、博士にはナイショだよ。」
11時00分、ガンダーラおよび県中部に住民退避命令が発令された。
−同時刻、アラーキー博士事務所−
私は鳴り止まない電話に頭を痛めていた。
「どこから情報が漏れたのだ…。タシルー、無事なのか…。」
私はモバイルを取り出して、ある電話番号に発信した。
「司令官を頼む…。アラーキーだ。…やぁ、ロブ…。…そうなんだ、いつもすまないね。よろしく頼むよ。」
電話を切った私は、ガレージに向かった。
「これで行くか…。」
ウーズレィ・ホーネットのイグニッションを捻り、エンジンを暖気する間にS・A・D社に連絡する。
「…わかっている。君らの利益は私の研究に直結しているからな。大丈夫だ、手は打ってある。それでは。…ん?あぁ、こんなときでも暖気を怠らないのが紳士なのだよ。」
暖気の完了したウーズレィで、私は嘉手納に向かった。
−12時00分 ガンダーラ−
「なかなか釣れないなぁ、カラーローテーションはほとんど…」
タシルーは、予想以上に烏賊釣りに魅了されていた。
その時、タシルーの背後から声が聞こえた。
「タシルー?あなた、タシルーよね?」
タシルーに声をかけたのは、身長180cmをゆうに越える筋肉質の女であった。
「誰だよ、おじさん?なんで僕を知っているの?」
タシルーは、少し構えて尋ねた。
「のり子よ。アラーキー博士に依頼したチェ・チョリーナ・のり子よ」
のり子はタシルーに近付きながら話す。
「嘘つけ〜、おじさんだろう!ヒゲや腕毛がおじさんだよ。なんでスカートはいているの?」
タシルーものり子に歩み寄る。
「タシルー、お姉さんは『女』よ。よく年齢以上のオジサンに間違えられるけど…。」
タシルーがさらにのり子に近付く。
「嘘だーい。じぁあ、この股の間にあるモノは何?」
のり子は顔を赤らめて言った。
「……、イっ、烏賊よ…。」
その一言でタシルーは覚醒した。そう大人に戻ったのである。
「…烏賊だと言うのか。烏賊なら100グラム程度だな…。のり子…、もう一度聞く、100グラム程度だな?この烏賊は…。」
そう言ってタシルーは、のり子の股間の『烏賊』を握った。
「ほぉ〜。ん?なぜだ…?だんだんと重量が増えるじゃないか…。200、400、…1000、1500。おっ、お前…、デカイッ、デカ過ぎるぞ!」
のり子は羞恥の表情で顔を横に向けた。
「あなただって、烏賊を付けているじゃない!」
そう言って、のり子はタシルーの股間を掴んだ。
「はぅ、はうぅぅ〜。」
のり子のあまりの握力に、タシルーは悶絶した。
「30グラムくらいかしら…。完璧なリリースサイズね。あら、痛くしたら少しサイズアップしたわね…。」
タシルーもおよそ『2キロオーバー』に膨張したのり子の『烏賊』を、膝を崩しながらも強く握り返す。
「まっ、負けないぞ、おっ、俺は。あぁ〜いい気…、いや、離せっ!離せ、のり子!」
微笑みながら、のり子が言う。
「あらあら、タシルー…、これっぽっちなの?『M栄原の重機関銃』の名は、ハッタリだったのね…。ホッ、ホッ、ホッ。??、あら、言葉にも反応しちゃうのね…。この、変態ドM烏賊馬鹿っ!」
のり子の表情にはすでに余裕すら漂っている。
しかし、のり子の一言でタシルーの目つきが変わった。
そう、タシルーのスイッチが入ったのである。
「…M栄原の…だと。M栄原の…だと、ふざけるなっ!」
タシルーは一気に体勢を優位に整えて、のり子の前に立った。
そして少々大きくなった、自身の『烏賊』でのり子の両頬を叩き倒した。
のり子は成す術も無く、両手を地面に落とした。
「…のり子。俺を甘く見るな。そして、教えておいてやる、M栄原の重機関銃じゃない…。『S町のカミソリ』だ。または『婆さんでも…(R35・止めとこうね!)…の?』だ。…お前、どこまで知っているんだ…。」
タシルーはのり子を見下ろしながら話した。
「ハァ、ハァ…。タシルー…、嫌いじゃないわよ、こんな『おしおき』…。」
のり子は息を切りながらタシルーを睨みつける。
「もうよせ、そこまでだ、二人とも!」
二人が振り返ると、声の方向にアラーキー博士と軍服の男が立っていた。
「大丈夫か?タシルー。心配するな、チェはすぐに見つかる。…のり子、貴様、ただの大女じゃないな?」
そう言うと、アラーキー博士はタシルーの『サムライブレード』を手にとり、エギをキャストした。
「何してるの、あなた?こんな場面なのに、エギングなんて…。」
のり子が唖然として、つぶやく。
博士のロッドが大きな孤を描き、ドラグ音が響く。
烏賊がノッた。
手前に寄せた烏賊に、タシルーがギャフを打つ。
「博士、いいサイズですね〜。おっ、アワビ、ガジガジですね。」
タシルーが笑顔で博士に話す。
「ちょっと、あなた達!そんな悠長に烏賊釣りしてる場合なの!この瞬間にもチェは…、チェは…。」
アラーキー博士が振り向かずに言う。
「…のり子。俺が今、烏賊を釣った釣座を見てみろ…。」
のり子が振り返ると、その釣座にはすでにキャストを終えたチェ3000の姿があった。
「えっ?そっ、そんな、…いつの間に。」
のり子の視界に映る風景が、一瞬にして色を失う。
…絶望と言う名の副産物を携えて、鉛色の北風が周囲を取り囲んだ…。
〜続く〜
次回 完結編
Act 3 コード13880
・チェ3000の捕獲は成功するのか?
・謎の大女、のり子の正体は?
・タシルーがとった英雄的な行動とは?
お楽しみに
鉄人よ、聞いているか?
最終目的は、
こんなことじゃない。
Tuned by 変態烏賊書房
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