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2010年12月17日

東シナ海は熱く燃えて2

〜前回までのあらすじ〜



GTを初めて約半年が過ぎても、いまだノーキャッチである私にプロアングラーとの乗船という幸運が舞い降りてきた。

GTレジェンド大久保幸三氏&『大久保軍団』との乗船は初心者の私にとって、

「安全ピンの外れた手榴弾を持ち歩く」

と言うくらい、気を抜くことができない緊張感を予想していた。


前日の夜に 『面通し』 を行い、
いよいよ出航の朝を迎えたが、海況が悪くあわや中止寸前となる。

しかし、天候は小康状態になるとの船長の判断によって、
BULE DRAGON は出航の準備に取り掛かった。



初心者の私に、はたしてGTは微笑むのだろうか?・・・・。




3.激しい海況


マリーナの中に車を止め、トランクから荷物を降ろし終えパーキングに移動しようとしたとき、
一台の車が私の横にすべり込んできた。


本日の乗船メンバー、八木氏の到着である。

八木氏は今回のメンバーで最もジェントルな雰囲気を漂わせている。

マンブーキャプテンが出航の準備を黙々と続ける中、
レジェンド大久保幸三氏とカツオ氏は談笑しながらタックルの確認をしている。


「アラーキー、寝れましたか?」


レジェンドが、緊張して無口になっている私に質問してきた。


「いやぁ、一睡も出来ませんでした。」


「やっぱり!?俺もそうやねん。
 釣りの前の日はワクワクして寝れへん時が多いわ!」


ちなみにわたしの場合、
(あなたたちのせいで)緊張して眠れなかった事実は言わなかった。


出航の時間は刻々と迫り、船上ではすでにラインシステムを組んだタックルが3本並んでいる。
私もバイトリーダーの結線作業に取り掛かるために、道具をお借りして作業に勤しんだ。


そのとき、レジェンド大久保の目が急に殺気を帯びる・・・。


「アラーキーさん、アンタのフック錆びとるやないか・・・。」


その日最初の突っ込みが入った。


これは後ほどのレジェンド大久保幸三氏との対談時にお聞きするのであるが、

『完璧な状態に近く、限りなくリスクが無い状態で闘う』

というレジェンドのスタイルがゆえの指摘であった。


私は当然にフックを新品に交換し、
何とかタックルとシステムの準備を終える。


メンバーの準備が整い、BLUE DRAGON のエンジンに火が入った。

心地よい振動と、ほのかに漂うオイルの香りがアングラーの心にも火を入れる。


いよいよ始まるのだ。



うねりは激しく海面にはウサギが跳ね、ぼんやりとした陽射しが海況の悪さを増長している。
さらに強く吹く東風は、今日のGT戦の物理的な厳しさを物語っているようだ。


訳のわからないくらいに、全身のストレッチを続ける八木氏をアフトデッキで眺めながら、私は空を見上げ神に祈った。



『プロが追いかけるGTの世界とはどのようなものなのか?

 南無八幡大菩薩 願わくば GTに 我がルアーを食わせ給へ・・・。』




4.戦闘開始


エンジン音が一段階静かになり、船体は 「流す」 状態に入る。



オフショアを経験されているアングラー諸氏はご存知であろうと思うこの瞬間、
たいていは緊張感と期待感のピークに達してしまう。


「はい、投げていいよ。」


マンブーキャプテンの声がフライングデッキから響くと同時に、
バウデッキとアフトデッキに分かれて4名のアングラーがルアーを東シナ海に放り込んだ。


「アラーキー、そこでいいよ。どうぞ、どうぞ」


大きなうねりに激しくバウンドするバウデッキで、
フラフラとしている私に危険を感じたカツオ氏がミヨシの座を譲ってくださった。


全身の筋肉をロッドに同調するようにしならせて、本日の第一投を行う。


大口径ポッパーは十分すぎる飛距離を稼ぎ出して、隠れ根の奥に着水の飛沫を立てる。

着水と同時にポッピングを行う、と同時にカツオ氏の様子も横目で盗み見する。


揺れの激しいバウデッキに立つカツオ氏、
投げている「シャクレローター」を操る最中は、
『膝と腰』を使ってバランスをキープしている。

リールとロッドを使ったSTOP&GOの動きと、バランス維持の腰の動きがシンクロしている。

文章には表しにくい動きだ。

あえて表現するならば 「ラジコンを大げさに操作する」 と言うところか・・・。


やはり、しっかりと説明しよう。


お尻を振りながら、
左手を上下に細かく動かしている 
のである。


一歩間違えれば完全に下品な状態だ。



そう、自慰行為にも見えてしまうその動きは私の心をガチリと捉え、
視線を釘付けにした。


ひと流し目、船上のメンバーのルアーには反応は無い。


数回流した後にポイントを移動。



再びミヨシに立ってポッパーをフルキャストする。
バウデッキではカツオ氏が再び あの動き を繰り返す。


しばらく後、その日最初のヒットが訪れた。


「デタッ!」


アフトデッキから響くその声は、間違えなくレジェンドの声であった。


ヒットと同時に響くエンジン音―。


この瞬間は、毎度のことながら興奮する。

まるで、敵の襲来警報と同時にレシプロエンジンをスタートさせて飛び立つスピットファイアーをイメージしてしまう。



獲物がかかった瞬間に響くセルの音と重厚なエンジン音は、
戦いの始まりを告げる合図なのである。


急いでルアーを回収しアフトデッキに向かうと、
すでにレジェンドは竿を立てて「寄せ」の状態に入っていた。


この日二度目の失策であった。


レジェンドのファイト前半を見ることが出来なかったのだ。

瞬殺で上がってきたのは15キロクラスのカスミアジ。
しかもファイトの最中に動きをストップして記念撮影に応じる余裕すらあった。


「なかなかオモロイファイトやったな。
 景気付けにちょうどよかったんとちゃう。」


リリースした後、レジェンドは涼しい顔でサラリと言った。


やはりレジェンド、どんなサイズの魚に対しても貪欲に楽しむという基本的なスタンスを持ち続けているのであろう。


そしてBULE DRAGON は次のポイントへ向かう。


5.捕獲


「投げていいぞ。」


フライングデッキからマンブーキャプテンの声が響き、
私は再びミヨシに入らせてもらいルアーを放り投げる。



バウデッキに陣取るのは、そうレジェンドである・・・。


この緊張感、そしてレジェンドのすべての動きを見続けていたい欲望。


しかし、自分自身もロッドを振っているときには当然であるが自分のルアーを注視しておく必要がある。


私の緊張感を取り払うかのように、レジェンドが声をかけてきた。



「アラーキーさん、あんた少々変態かい?」



「・・・変態ではありません。なぜまたそのようなことを?」


「アセロラさんから『ちゃっと変態やけど、ちゃんと面倒見たってや。』と、
 お願いされてんねん。あの人はええ人やな、ちゃんと感謝しーや。」


少々微妙な会話を交わしているそのときに、
精神的な落雷が私に訪れた。



ゴクッ!



巻いているリールのハンドルとロッドに明確なアタリを感じたのである。


「あっ、デタッ!! 


前頭葉にスパークが走り、世間の常識やシガラミ、仕事、悩み、その他諸々が一瞬にして自分の後方に吹き飛んでいく。


エンジン音が響き、戦闘が開始された。
後方からはレジェンドの指示が飛ぶ。


フッキング、フッキング!ラインテンションが無い状態でフッキングしてどうなる?」


「えっ、こんな感じですか!?」


ロッドを後方に引いて強引にフッキングを噛まそうとするが、
船が大きくバウンドするためになかなか上手くいかない。


「船の動きと、魚の重量を感じてフッキングするんや!
 全然出来てヘンや無いか!フッキング! 」


そのようなやり取りを繰り返していると、水中に銀色に光る物体が見えてきた。


獲物だっ!


私は、興奮と混乱で取り乱している状態から一瞬で冷静を取り戻した



そう、気がついたのである。



1ミリたりとも、ドラグが出ていないという事実を・・・。



すんなりとタモに収まった私の人生初のGTは、
アフトデッキに転がってリリースポンプからの水を全身に浴びていた。

当然のことながら計量のための準備など、気配すらない。


しかし、船上からは「よくやった、おめでとうアラーキー!」というメンバーからの祝福の言葉が響く。



これがGTフィッシングの醍醐味だと思った。


船上のメンバーがチームとなり、全員が個人の釣果を自分のことのように称えられる。


最高だ、これほどまでに爽やかな瞬間はなかなかお目にかかれない。

ジワリと初GTの感慨がココロにこみ上げてきた。


「ありがとうございます!最高ですね!」


私は心からそう叫んだ。



記録は 3キロ 

(初GTの目標は62キロでしたが、60キロぐらい足りませんでした。)


そしてリリースの時は、なんとも言えない至福の瞬間であった。


(しかし、とりあえずは ジャイアントメッキ=GM ということなのか。)


至福の時間も束の間、マンブーキャプテンから地獄の一言が発せられる。


「普通はカケたら、ラインシステムをやり直すもんだ・・・。
 さぁ、システムを組みなおせ、アラーキーよ。」



この後、バウンドを繰り返す船のキャビンで、
しばらくの間システムと格闘を続けることになる。



〜続く〜
tuned by 変体烏賊書房



次回

・ ついに爆発!

・ 終わりなき咆哮!

・ 真面目はここまで!

・ 次ぎにロッドを絞り込むのは・・・?





私の挑戦を、ぜひとも目撃してほしい。

挑戦。いろいろな意味で・・・。



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Posted by 巨匠アラーキー at 15:00│Comments(4)さ行
この記事へのコメント
ダメだ!
死にそう涙出てきた(爆)
ヤッバイな~~!!
めちゃめちゃいいやんけ~!
ブログ記事で今年一番笑ったじゃないか(爆)
Posted by 赤侍 at 2010年12月17日 15:15
やはりこのままでは終われないですよね!アラーキー


期待してますよ!アラーキー


そして……(涙)さようなら!アラーキー
Posted by あっき~ at 2010年12月17日 15:16
>赤侍さん
>ブログ記事で今年一番笑ったじゃないか(爆)


えっ?

ここまでは、笑うところはありませんよ。

大丈夫、安心して下さい。

次は夕方。
Posted by 巨匠アラーキー at 2010年12月17日 16:47
>あっき〜隊長
>やはりこのままでは終われないですよね!アラーキー


終わったら、どうしますか(笑)


さて、逃げる準備してからUPします。
Posted by 巨匠アラーキー at 2010年12月17日 16:53
 
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