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2010年12月17日

東シナ海は熱く燃えて3

前回までのあらすじ―



幸運に次ぐ幸運により、プロアングラー レジェンド大久保幸三氏および『大久保軍団』とのBULE DRAGON乗船チケットを手に入れた私は荒れた海況のなか、ついに念願の初G Tをキャッチした(ジャイアントメッキ=GM ではあるのだが・・・)。

そして、次の獲物を求めるために激しく揺れるキャビンにてラインシステムを組むことになった。


つぎにロッドを締めこまれるのは誰か?そしてGTは・・・・。

6.H2B ROCKET


揺れの激しいキャビンで、ラインを捻りつつシステムを組む。
作っては切り、切っては作るの繰り返しである、なかなか上手くいかない・・・。


キャビンで悪戦苦闘していると、バウデッキから声が響いた。


「デタ!」


けたたましくエンジン音が響き渡り、戦闘が始まった。


ロッドを横後方に引きずり、大きく数回フッキングを入れるレジェンドの後ろ姿がキャビンの窓から見える。


膝で大きなバウンドをやり過ごしつつ、腰および上半身の筋肉と、
レジェンドのロッドである『H2B ROCKET』をスピーディーかつ的確にシンクロさせてリフトアップを行う。


システムを組む手を止めて、レジェンドのファイトを見入る。



凄い・・・。



激しく寄せたかと思うと、ドラグが出るときはしっかりと「抜く」。



私は思わず見とれてしまった。



プロのファイトを見るという機会は、なかなか無いものである。
釣りの上手な人は多い。
しかし『それ』を生業としている人物のファイトを、
間近で見ることが出来るのは大きな衝撃であった。


レジェンドから放出されるアドレナリンの香りが色濃く漂う空気、息遣い・・・。


なによりも、すべてをGTに捧げた男のファイトには鬼気迫るものを存分に感じることが出来る。



やはりというか、予定通りの工程のように勝負は一瞬でついた。



リリースポンプの音、差し向けられたデジタルカメラのレンズ。

これこそが王者の貫禄というものであろうことを、
アフトデッキに横たわる25キロに迫るロウニンアジ(GT)の巨体を見れば無意識下の意識が感じていた。



ため息が出た、感嘆のため息である。



そしてレジェンドは素早くリリースを行い、
もう一本のタックルを持って再びファイティングポジションからルアーをキャストした。



H2B・・・、日本の科学技術の頂点の結集で作られた純国産ロケットの名称。

レジェンドがGTロッドにかける想いが、SMITHのテクノロジーによって体現された渾身の作品である。



H2Bの後継機に宇宙飛行士が乗り込む日が来るとするならば、
それは夢を追い続ける人物であろう。

GTロッド、『H2B ROCKET』を最も的確に操り最大の結果を残していくのが、
夢を追い続けるレジェンド大久保幸三氏であるのと同じように。



7.ダンディー八木


ようやくシステムを組み終えた私は、
次のポイントから再びミヨシにてレジェンドとキャストが出来ることとなった。


キャスト再開の2投目、私のポッパーに大きな負荷がかかりドラグが唸る。


「デタ!」



いきなりのヒットに困惑気味で興奮状態の私であったが、
またまたレジェンドからフッキングが出来ていないとの指摘を受け、
冷静さを取り戻すことが出来た。


「OK、ロッドを立てろアラーキー!」


レジェンドのOKに、いよいよ獲物を寄せに入る。



・・・ついに来たのだ、アレを使う瞬間が!



そう、ジンバル・・・。


SARA先生にお願いして、
『投喰獲還(投げる、喰わす、獲る、海へ還す)』と掘り込んでもらった
愛すべき私のジンバルが日の目を見る瞬間が訪れたのである。


しかし、なかなか竿尻がカップに納まらない。

もたつく私にレジェンドから衝撃の一言が発せられた。


「そんなん使わんでええ!脇に挟め!それで十分なサイズやろ!」


おろ?やっぱりそんなモンのサイズなのか?
と考えていると、一瞬で魚が寄ってきた。


GTでもガーラでもない、歯魚『サワラ』であった。


10キロオーバーではあったが、この釣りでは外道である。


「お土産に持って帰るか?」


マンブーキャプテンの問いかけに少し悩んでいると、
私の後方でもう一人悩んでいる人物がいた。



ダンディー八木であった。



私がレジェンドから基本的な注意を受けるたびに、
やさしく丁寧に教えてくれるダンディー八木。

私が釣り上げた高級魚サワラを持ち帰ろうかと悩むダンディー八木。

ダンディー八木、天然なのであろうか?


しかし、このあとに起こる忌まわしい出来事から、
ダンディー八木は私を救ってくれるのであった。


高級魚サワラをゲットした私は、
上機嫌ではあったが、不安も感じていた。



このタイミングで、もう一度システムを組む時間は『大久保軍団』のファイトを観察する時間が無くなってしまう。

そしてなにより、大きく揺れるキャビンで、不慣れな私が短時間で屈強なシステムを組むことなど出来ない。



わたしは思い切って(ビームライフルを捨てたアムロの気持ち)本日のフィッシングを切り上げ、
マンブーキャプテンの陣取るフライングデッキから終盤戦を見学することに決めた。


「おっ、アラーキーさん、高みの見物やで。

 『お前らどないやねん?』ちゅう感じやな。

 おいっ!カツオ!八木!どないすんねんっ!はよ釣れや!
 
 初心者に笑われるで!わはっはっはっ!」



レジェンドの声がデッキ中に豪快に響く。

バウデッキではカツオ氏が、アフトデッキではダンディー八木が黙々とロッドを振るっている。


先ずはカツオ氏を観察することにした私は、舐めまわすようにカツオ氏の全身を眺めた。


肩幅のスタンスに開いた脚、少し背を曲げて左斜め下にロッドをふるってのポッピング。


そのとき私の目に、小さな異変が映りこんだ。



カツオ氏の股間から、ダラダラと粘液質の液体がこぼれている


「カツオさんの股から漏れている『アレ』は何ですか、マンブーキャプテン?」


不思議に感じた私は、マンブーキャプテンに尋ねる。
するとマンブーキャプテンの目が険しく変化した。


「・・・あのヤロウ、また始めやがったな。
 今日のカツオはバイトをモノに出来ていないだろう?
 そんな日はいつもこうなるんだ。アラーキー火気厳禁だぞ!」


「マンブーキャプテン、だから、あの液体は何なのですか?
 火気厳禁の意味もわかりませんし・・・。」


「あの液体は、集中力が高まったときのカツオの『カツオ汁』だ。
 ガマン汁とは違うぞ。
 揮発性はそれほどなのだが、発火温度は極端に低いんだ・・・。
 おいっ!おいっ!カツオ!気をつけろまた漏らしているぞ!」


カツオ氏の表情はもはや恍惚といったものであり、
当然の事ながらマンブーキャプテンの声は届いていない様子である。


つぎにダンディー八木に目線を移す。



私は、ダンディー八木の持つひとつの特徴を掴んだ。

キャストからリーリング、ルアーの回収、デッキでの歩行。

すべてにおいて、背中から頭頂に鉄筋が入っているかのように 軸がブレない のである。


ルアーを引く時のダンディー八木は最高である。

顔の位置が全くといっていいほど固定されているのだ。
まさに『マシーン』の動作のそれであった。


ふとミヨシを見ると、レジェンドの顔も全くブレない。
それこそ鉄骨を身体に入れてロッドを操作しているように見える。


ピシッ!ピッシ!


私の幻想なのか?

レジェンドの関節やロッドからは、スパークがチラホラと見える・・・。


横に目をやると、隣に座るマンブーキャプテンも鋭い目つきでレジェンドを見つめていた。



「すばらしい・・・、レジェンドから美しい光が見えるようだ。
 マンブーキャプテン、まるで漢(おとこ)の闘志が具現化して、
 火花を散らしているように見えますね。」



私がこう言うと、マンブーキャプテンはレジェンドを見つめたままつぶやいた。


「・・・アラーキー、なに悠長なことを言っているんだ?

 ・・・引火するぞ。 」



「えっ?カツオ汁とは揮発性がそれほどでもないのでは、・・・あっ!!

 は、発火温度が・・、極端・・に、・・・低い・・・ 」





その瞬間、バウデッキに広がっていた 意味のわからない液体 にレジェンドの関節からこぼれた火の粉がダイブして、薄紫色の炎が広がった。


「逃げろっ!アラーキー、逃げろ!」


マンブーキャプテンは叫びながら私をアフトデッキに叩き落した。


すべてがスローモーションのように私の目に映った・・・。


8.脱出


ゆったりと空中に漂った私は、バウデッキに叩き付けられる寸前にガシリとした力強い両腕に抱えられた。
 

「大丈夫ですか、アラーキー?
 
 さあ、急いでください。
 
 自動膨張のベルトは締まっていますか?」


「・・・ダンディー八木、ありがとうございます。
 
 一緒に海へ飛び込みましょう、早くしないとこちらにも火が・・・。」


私の言葉に、ダンディーは私の言葉を遮るように首を横に振って答えた。


「・・・アラーキー、私は残ります。
 レジェンドはまだ諦めていません、そしてキャプテンも同じ気持ちでしょう。」


「・・・・、ダンディー、諦めていないって・・・。

 船・・・、めちゃくちゃ炎上していますよ!

 釣りどころではないでしょう!さぁ、一緒に逃げましょう!」


しかしダンディー八木は、うっすらと笑みを浮かべながら私に言った。


「諦めない、それが大久保軍団なのです。

 いや、GTアングラーなのですよ・・・。
 
 さぁ、急いでください。」


ダンディー八木はそう言うと、渾身の力を込めて私を海に放り込んだ。



ガボンッ!
荒れた海中に一瞬沈む私の身体を、自動膨張が作動して海面に引き上げる。



「プハァッ!!」



長らくの間を水中で過ごしたため限界を超えていた肺から大きく息を吐き出し、
ようやくたどり着いた海面で、私は首を回してBULE DRAGONの船体を探した。



大きな炎と黒煙に包まれたBULE DRAGONの各デッキでは、メンバーは未だロッドを振っている。



レジェンドは一心不乱にロッドを振り、
ダンディー八木はレジェンドに炎が近づかないようにそれと格闘している。


カツオ氏はすでに全身を炎に覆われていた。


次の瞬間、大きな爆発音とともにデッキから一際大きな火柱が上がった。


「おぉぉぉぉっ!!うぉぉぉぉぉぉ!!いやだぁぁぁぁ!」


私は大声で叫んだ。


そのとき、フライングデッキで舵を取るマンブーキャプテンと一瞬目が合った。


キャプテンは私に向けて軽く敬礼した。


「マンブーキャプテン・・・。普通は逃げますよ!」」


私も涙を流しながら両腕をキャプテンに向け、親指を下に向け叫んだ。



そして、バウデッキのカツオ氏は私を見つめながら、

なぜか下半身を露出 している。


BULE DRAGONは船尾からゆっくりと海中にその姿を消していこうとしている。


そしてミヨシに立つ、レジェンドと目が合った。


「アラーキー!!来世で会おう!」


そう叫んで、レジェンドはなぜか

 チ◎コを左右に二回振った 



「レジェンドッ〜!!なんでチ◎コを露出しているのですか?」



沈み行く船上から、レジェンドは私の目を見つめ、微笑みながら大きく頷いた。



「・・・レジェンド、うなづく意味がわかりません!
 皆さんっ!早く逃げてください!おーいっ、お〜〜いっ!!」



燃えながら沈み行くバウデッキで、
40歳前後の大人の男性4人が全裸で輪になって奇妙な掛け声とともに変なおどりを始める。



「ウホ ウホ GT 
 
 ウホ ウホ GT 
 
 ウホ ウホ ピチピチ・・・



次の瞬間、BULE DRAGONは大きな爆発とともに、海中にその姿を消した。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


荒れた東シナの深く暗い紺色の海上で、私は天を仰いで咆哮を上げた。


強風が潮と涙で濡れた頬を叩く・・・。

薄れ行く意識の中で私はその身体をただただ波に翻弄され続けるしかなかった。



〜続く〜
tuned by 変態烏賊書房



次回

・BULE GRADON

・生還

・システム



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Posted by 巨匠アラーキー at 18:00│Comments(12)さ行
この記事へのコメント
アラーキーってスクジャ辞めたよね!

まさか、まだスクジャの一員じゃないよね?

このままじゃスクジャメンバー全員殺されそうな気がする(怖)

俺、スクジャ、イチヌッケタ~!
Posted by あっき~ at 2010年12月17日 18:33
お~!
キタキタァーーーーー!(爆)
Posted by rikie at 2010年12月17日 18:46
僕はあなたを知らない!
会った事も話した事もない!

ウリヒャー デージナトーン
Posted by 赤侍 at 2010年12月17日 18:48
素晴らしい記事に感動しております♪
プリントアウトして,GTコーナーへと!
未来永劫飾らせていただきますm(、、m)

Arapediaサイン会も開かせてもらいます
Posted by minow-l at 2010年12月17日 19:59
荒木氏のチョンコ竿にシステム組んでホッパー装着後、平泳ぎで本島外の島に逃げて下さい(笑)
Posted by せいゆう at 2010年12月18日 09:47
【せ行】

尖閣に逃げたら、中国が手を引くはずだ(爆



GTも一杯いるみたいよ~。



【講評】

かなりいけました。


想像してごらん、巨匠は薄着で笑っちゃう~ ああ 笑っちゃう
Posted by アセロラな人 at 2010年12月18日 10:38
確かに超大作だ。

えっ まだ続くのか。

次は 完 をよろしく。
Posted by cm at 2010年12月18日 20:34
>あっき~隊長

知らなかったのですか?
連帯責任ですよ。

スクジャのメンバーは一心同体、

つまり 心はひとつ、体もひとつ、責任も同じ。


・・・さぁ、逃げましょう!! 


急いでっ!!



>リッキー先生

先生、あなたにも追っ手が迫るとおもいます。

逃げてください、誰も近づけない『リーフ』へ!

あっ!

逃げるときはロッド持参で!


>赤侍大先輩

いつもありがとうございます。
私のブログ記事を、いつもいつも書いて下さって。


本当にありがとうございます!


今回のブログも赤侍大先輩の文章ですからねぇ。

さすが元暴◎族!気合が違いますね(笑)

実は相談があります。





一緒に逃げてほしいのですが・・・。
Posted by 巨匠アラーキー巨匠アラーキー at 2010年12月19日 21:56
>minow-lさん

ダメダメ!

餌釣りコーナーの

『生えびの水槽の底』

に貼ってください・・・。


・・・寄宮丸で、高飛びさせてください。


>アセロラ御大

ありがとうございます!


一緒に逃げていただけるなんて、光栄です!!

尖閣に逃げるのであれば、そのまま違法操業を続ける中国の漁船をチャーターして『GT』やりましょうよ!

・・・たぶん、JAPANには帰れませんが(笑)


>cm大先輩

次回でひとまず、中締めです。ご安心を!

そろそろ『烏賊シリーズ』に戻らなければなりません。

ぜひともご一緒させてくださいませ!
Posted by 巨匠アラーキー巨匠アラーキー at 2010年12月19日 22:06
とりあえず執筆活動に入りましょう。
一冊出しとくべきです爆
Posted by 優理丸 at 2010年12月20日 00:20
>敦船長

いつもありがとうございます。


本編もいよいよ完結します。

キリが良いので、
『2nd Edition』
を、年内で一旦終了します。


次は、『3rd Edition』ですね(笑)
Posted by 巨匠アラーキー at 2010年12月20日 09:53
>せいちゃん

・・・すまない、見落としていました。


>荒木氏のチョンコ竿にシステム組んでホッパー装着後、平泳ぎで本島外の島に逃げて下さい(笑)


一緒に逃げませんか?

逃避行コースのご案内


パプアニューギニア→モロッコ→バミューダ→ニューカレドニア→スリランカ→モンゴル→伊江島


※基本的には、五つ星ホテルでの宿泊になります。
(伊江島のみ民宿)
Posted by 巨匠アラーキー at 2010年12月20日 10:13
 
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